ヒューリスティックスをビジネスに活かそう!

最近ビジネスやマーケティング、経済学などでよく出てくるようになった「ヒューリスティックス」という言葉ですが、まだまだよく知らないという方も多いかもしれません。2002年にノーベル経済学を受賞したダニエル=カーネマンの影響もあって、日本でもかなりこの「ヒューリスティックス」が一般的に使われるようになってきました。

 

ヒューリスティックスとは、一言で言うなら「思考のショートカット」、「思考の効率化」。

物事を認識する時にいちいち細かいことを考えなくても、経験から多分コレはこうだろう!という答えを自然と導き出すような思考プロセスの事を指します。ある一定の偏りが生じてしまうことからバイアスといわれることもあります。

 

ちょっと小難しく言うなら、人間が認知や意思決定をするときには、無意識のうちに過去の体験や学習から導き出される経験則を利用していて、その思考の流れをヒューリスティックスと呼んでいます。

 

例えば、赤い粉を見ると勝手にこの粉は辛いのでは?と予測してしまうのは、過去にトウガラシや一味などの赤い調味料を口にして辛い!という経験をしているからです。

赤、黄、青の3色を見て何となく危険な順に赤⇒黄⇒青と感じてしまうのは、日ごろ信号を目にして、その信号の意味が赤⇒危険・止まれ、青⇒安全・進めのようなイメージになっているからでしょう。

あるいは、スポーツをやっている人は赤はレッドカードで退場、黄色はイエローカードで警告、などと意味づけられている可能性もあります。

これらの経験から結び付けられる認識が、物事を判断する時に「瞬間的に」呼び起こされるのです。

 

これを、いちいちこの赤い粉は何だ?粉の粒子は・・・香りは・・・成分は・・・とかを細かく分析しながら、ゆえにこれは辛い!という結論を出したりしていては、目に飛び込んでくるモノや事象を認識したり、判断するスピードが劇的に遅くなってしまいます。何かモノが自分に向かって飛んできている時に、その物体は重いのか、軽いのか、飛んでくるスピードは時速〇キロ・・・とか考える前に、「とにかく避ける!」という動作を行わなければ、日常生活の危険を回避することも出来ません。

 

ですから、このヒューリスティクスは環境に応じて、効率的に生きていく上で非常に有効な機能であるのです。

 

しかし、このヒューリスティックスのおかげで、合理的、論理的な判断を下したつもりが、実際にはそうでなくなっているケースというのが出てきてしまうのです。

 

ここでは、その合理的な判断が出来なくなってしまうヒューリスティクスの事例をいくつかみてみましょう。

ヒューリスティクスが合理的でないものの例

合理的でないヒューリスティクスには、利用可能性ヒューリスティクスと、代表的ヒューリスティクスのふたつがあります。

それぞれについて簡単に説明していきます。

利用可能性ヒューリスティック(Availability Heuristic)

利用可能性ヒューリスティックスとは、「物事の意思決定をする時には、頭に浮かんできやすい事柄を優先して判断材料にする」というものです。

 

代表的な例でよく言われるのが、飛行機事故のニュースを見ると、実際にはほぼ起きないにも関わらず、また起きるのでは?と思って利用を避けてしまうという事例です。実際には飛行機事故に遭うより、街中を歩いていて交通事故に巻き込まれる確率の方が高いのですが、それでも、強く印象に残っている事は判断する時の思考にも上りやすいため、飛行機に乗ると何か事故に遭遇するのではないか?という気がしてしまうのです。

代表性ヒューリスティックス(representative heuristic)

代表性ヒューリスティックスは、ある出来事の発生確率を考える時、特徴的な側面を持つ事象に過剰に影響を受けるという傾向になります。簡単に言うと、あり得そうか、なさそうか、によって判断する傾向のことというと分かりやすいでしょうか。

 

例えば、バイト先のコンビニに行ったら、レジのお金が盗まれていた場合、犯人の候補として二人の人物が挙がっていました。一人が、高校生のA君、もう一人が、新しくその日からバイトに入ってきた元暴走族のB君。どちらが犯人の確率が高いでしょうか?という質問をしたとすると、多くの方がB君と答えてしまいます。

本来確率的には5分5分でなければならないのですが、「その日からバイトに入った」とか、「元暴走族」とかのフレーズを見ると、いかにもあり得そうと思ってしまうために、B君が怪しい・・・となってしまうのです。

 

飛行機事故の事例でも、事故原因が機体の劣化で、とか整備不良で、という要因だと、また起きるのでは?と強く認識されて飛行機を利用するのを敬遠する傾向があります。しかし、これが、もし覚せい剤を使っていたパイロットによる錯乱が原因、とかだったりすると、もう次はないだろうと判断してそれほど利用の判断で影響は受けなかったりするのです。

ヒューリスティックスをビジネスに活かす

これらのヒューリスティックスという人間の特性は、ビジネスの場でも色々と上手く活用されています。

 

例えば、代表性ヒューリスティックスをマーケティングに使う事例としては「高いものは質が良い」というヒューリスティックスを利用して、値段の高いものをあえてラインナップに入れるという戦略があります。

一般的に価格が高い=質が良いと無意識に考える傾向がある為、質を求めるお客さんは自然と価格の高い商品を選ぼうとしてくれます。

 

一方で、多くの消費者は3つの選択肢があると、真ん中を選ぶ可能性が高いというヒューリスティクスもあります。もしこれが質が高くて良いモノと、質が悪くて安いモノの2つしかなければ、買わないという選択肢を選ぶ消費者も一定数いるのですが、ここに質も値段もそれなりという真ん中のゾーンの選択肢を用意すると、この値段も質も真ん中の商品を購入する確率が高いという事は実験でも証明されています。

 

このヒューリスティックスを日常的に使っているのが不動産屋さんです。セオリーは3件連続で物件の内覧案内をするわけですが、最初に価格が安くて、部屋のスペックも低い物件を見せます。そして、次に価格は希望よりも高いのですが、部屋のグレードが高い部屋に案内します。そして最後に、価格は希望に近いもので、部屋のスペックも高い部屋とまではいかないけど、安い部屋よりは充実している、という部屋を見せるのです。

すると最後に見せた物件を契約する人が非常に多いというのは、不動産業界では当たり前の話です。

まとめ

合理的な判断が出来なくなってしまうという、ある種人間のバグのような要素であるヒューリティクス。上手く使えば巧みなマーケティング戦略ですが、悪用しようとすれば、単なる詐欺や悪徳商法となりうるだけに、その使い方には十分注意が必要です。

 

同時に、自分がそのヒューリスティクスのおかげで非合理的な決断をしていないか、意識することが出来れば(なかなか出来ないので難しいのですが・・・)、決断のあとで後悔するような場面は減らすことが出来るかもしれません。

 

いずれにしても、これらのヒューリスティックスを自分で意識して、身の回りにいかにその事例が多いか分かっている事が、上手く使いこなしたり、ヒューリスティクスに左右されない大前提になりますので、まずは仕組みと事例をしっかり理解するところから始めましょう!

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