カタルシス効果とは?~話を聞いてもらうだけで気持ちが軽くなる~

 

カタルシスというのは、爽快感や開放感のことです。と言っても抽象的で何のことかわかりませんね。

例えば、スペクタクル映画のクライマックスで、建物などが一気に崩壊していく迫力ある場面を見ると、何だかすっきりした気持ちになります。あるいは、悲しいドラマを見て、涙をたくさん流したら何だか気持ちが晴れ晴れした、という経験もあるでしょう。お笑い番組を見て大声で笑えば、もやもやした気分が消え去ったりもします。そういう爽やかな気分がカタルシスです。

心理学でカタルシス効果というときは、抑圧された葛藤やストレスを言葉や絵画などさまざまな方法で表現することによって、カタルシスを得ることをいいます。カタルシス効果によってバランスを崩した心を健全な状態に戻すことができます。

カタルシス効果とはどんなものか?

もともとカタルシスはギリシア語で、排泄や浄化を表す言葉で、カタルシス効果は「心の浄化作用」とも呼ばれます。カタルシス効果とは、心の中に溜め込んだ負の感情を誰かに代弁してもらったり、自分で吐き出すことで気分が楽になる心理現象です。

ここでいう負の感情とは、悲しみや苦しみ、痛み、怒り、不満、妬み、憎しみ、などの葛藤やストレスのことです。

深層心理学では、自分では意識できない領域である無意識の世界に押し込められた、そういう負の感情が心のバランスを崩して、さまざまな症状が出ると考えます。フロイト派の心理学では、そういう抑圧された感情を意識化することでヒステリーなどの症状は収まると考えました。ユング派の心理学では、言葉で自覚しなくても、表現することで症状はなくなると考え、箱庭を作ってもらったりします。

カタルシス効果の発見

オーストリアの精神科医ヨーゼフ・ブロイアーの患者アンナ・Oは、衰弱、頭痛、視覚障害、感覚喪失、麻痺、意識の途絶、幻覚、言語障害などに苦しんでいました。ところが、アンナは、症状をブロイアーに話しただけで、それが軽減していたのです。アンナはこれを「談話療法」と呼びました。また、少しおどけて「煙突掃除」とも言いました。

また、アンナには「コップから水を飲めない」という症状がありました。ある日、アンナは「大嫌いな家庭教師が犬にコップから水を飲ませているのを見た」ことを思い出します。そしてそれをブロイアーに語ると、それがきっかけになってコップから水を飲めるようになったのです。

つまり、アンナは家庭教師が嫌いだったにもかかわらず、それを表に出さずに押し殺しているうちに、心の奥底、無意識の領域に歪みを溜め込んでいたのです。それがコップから水が飲めない、という症状になって現われていたのでした。

言葉では表現できないことを体が勝手に表現していたのです。家庭教師は嫌いだ!と。それを自覚し、言葉で表現したから、もう体で表現する必要はなくなったのでした。人の心と体は何と不思議なのでしょう。

ブロイアーは、協力者であったジークムント・フロイトと共にこの症例を他の事例とあわせて、1895年に『ヒステリー研究』としてまとめ、出版しました。この症例をもとに、フロイトは、無意識の中に抑圧した感情や記憶を意識化することで、症状が消失すると考えたのです。

話を聞いてもらうだけで気持ちが軽くなる

人の心の歪みを直し、苦痛を取り去るには、カウンセラーなどの専門的な訓練が必要で、ちょっと本を読んだくらいの生半可な知識でできることではありません。インターネットなどで知識を得ることは重要です。でも、心の歪みを直すのは専門家に任せないといけません。しかし、私たち素人でも、人の話を聞いてあげることはできます

夫が話を聞いてくれないことが妻のストレスを高める、というのはよく聞く話です。例えば、妻が新しい仕事に就く、新しい土地に家族で転居する、というような不安な時期、妻が夫に「大丈夫かしら」「巧くいくかしら」と繰り返し話し掛けても、夫はいい加減な返事をするばかりで親身に話を聞いてくれない、という妻の不満。

夫にしてみれば「何度も話し合ってもう結論が出ていて、今更変えられないことを、また話し合っても意味がない」と理性的に考えます。夫の言い分も筋は通っています。

しかし、妻にしてみれば、理屈の問題ではなくて、感情的な不安を共有して欲しいのです。夫の言うことが理屈では間違っていないので、言い返せない分、妻のストレスは高まります。両者のイライラが募り、段々夫婦の仲が険悪になったりします。

こういう夫が知り合いに居たら(あるいはあなた自身だったら)、「振りだけでもいいから、奥さんの顔を見て、時々相槌を打ったりして、真剣に話を聞いている様子を見せてあげなさい」とアドバイスしてみましょう。できれば手を握るなどのスキンシップを伴えば、なお有効です。

夫が話を聞いてくれ、自分の不安を理解してくれた、と思うだけで、妻のストレスは軽減されます。つまり夫の発言や行動からカタルシスを得ることができるわけです。

こんな例もあります。作家の遠藤周作にある青年が相談をしました。

「自分は喋るのが下手で、職場でも同僚や上司との距離がなかなか縮まらない。どうしたら話し上手になれるだろうか」

これに対して遠藤は「今の世の中、話し上手はたくさん居る。話し上手になる必要はない。君は聞き上手になりなさい。聞き上手はとても少ない。聞き上手になるのは難しくない。ただ、話している相手の顔を見て、適当な時に相槌を打てば良い。聞き上手になれば君は好かれるようになる」とアドバイスしました。

半信半疑ながら青年がそのようにしてみると、彼はほとんど喋っていないのに誰からも好かれるようになり、食事や飲み会にも誘ってもらえるようになったそうです。青年に話をすることがカタルシス効果をもたらし、相手に良い印象を与えたのでしょう。

話を聞いてもらえる人がたまたまそばに居ないとき

病的な症状が出るほどではなくても、いつも苛々する、気分が沈んで仕方がない、閉塞感や無力感に襲われる、というときは、誰かに話を聞いてもらうのが良いでしょう。悩みを打ち明けるのですから信頼できる人でなければなりません。また、信頼できる人であっても、こちらの話を良く聞いてくれる人でなくては困ります。

話を途中でさえぎって、意見をし始めたり、大変だと慌てふためいたりする人、居ますよね。悪気はないのでしょうし、心配してもらってありがたくもありますが、カタルシス効果は期待できません。

話を聞いてもらえそう人が居ないときは、1人で自分の気持ちを表現してみましょう。文章に書くのも良いでしょう。ユング派心理学では、芸術療法といって、絵を描いたりします。物語を作る、というのも有効です。心の中にもう1人の自分を設定して、それに向かって語りかけるだけでも良いのです。

まとめ

最近では「炎上」というインターネット上の現象を知らない人は居なくなりました。それほど繰り返されているのでしょう。どうやらみんな、ストレスを抱えイライラしていて、怒りをぶつける相手を捜しているようです。

これだけ通信技術が発達した現代ですから、うまくカタルシス効果を実現できる場を作ることができれば、ストレスは大いに軽減できるのではないでしょうか。

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